2026年9月1日、AnthropicがClaude Fable 5.1とClaude Mythos 5.1を公開しました。
紹介記事では「最上位モデルが25〜45%安くなった」と書かれがちですが、入力$10・出力$50というトークン単価はFable 5から1ドルも動いていません。値下げされたのはプロンプトキャッシュの読み込みだけです。
そしてAnthropicの公式ドキュメント自身が、ほとんどのワークロードはまずClaude Opus 5から始めるよう案内しています。Fable 5.1は「いちばん賢いから全部これで」という位置づけのモデルではありません。
Claudeの有料プランを使っている人と、APIを叩いている開発者では、確認すべき箇所も変わります。両方まとめて整理しました。
目次
- 何が公開されたのか
- 安くなったのはキャッシュ読み込みだけ
- ベンチマークは大きく伸びた
- 公式の推奨は「まずOpus 5」
- 「速いモデル」ではない
- 自分のプランで使えるか
- Mythos 5.1は同じモデルで、安全制御だけが違う
- APIから移すなら、直すのは3か所
- コードを変えなくても出力の癖は変わる
- effortは上げるほど高くつく
- データ保持は30日が前提
- よくある質問
- まとめ:性能表より先に、料金の中身と推奨モデルを見る
何が公開されたのか
Fable 5の後継にあたるモデルで、強化されたのは次の3つです。
- 長時間動くエージェント的なコーディング
- 複数段階のリサーチ
- 文書・表計算・スライドの作成
基本仕様は次のとおりです(公式ドキュメント)。
| 項目 | Claude Fable 5.1 |
|---|---|
| モデルID | claude-fable-5-1 |
| 公開日 | 2026年9月1日 |
| コンテキスト | 100万トークン |
| 最大出力 | 128Kトークン |
| 入力/出力 | テキストと画像/テキスト |
| 入力単価 | $10 / 100万トークン |
| 出力単価 | $50 / 100万トークン |
| キャッシュ読み込み | $0.25 / 100万トークン |
| 推論 | Adaptive thinking(常時ON) |
| effortの既定値 | high |
| 比較レイテンシー | Slower |
| 知識のカットオフ | 2026年6月 |
提供終了については、2027年9月1日より前には行わないと明記されています。
Claude API以外では、次のプラットフォームでも同日から使えます。
- Amazon Bedrock(モデルIDは
anthropic.claude-fable-5-1) - Google Cloud
- Microsoft Foundry
- Claude Platform on AWS
安くなったのはキャッシュ読み込みだけ

Fable 5からの変化は1行に収まります。
- 入力 $10 → $10(据え置き)
- 出力 $50 → $50(据え置き)
- キャッシュ読み込み $1 → $0.25(4分の1)
キャッシュ読み込みは、Fable 5.1では基本入力単価の0.025倍です。他のClaudeモデルは0.1倍なので、Fable 5では$1でした。5分キャッシュの書き込み$12.50、1時間キャッシュの書き込み$20、512トークンという最小キャッシュ長は変わっていません。バッチ処理は入出力とも50%オフで、$5と$25になります。
Anthropicの推定では、典型的なワークロードでFable 5より約25%、エージェント的な用途では最大で約45%の削減になるとしています。
キャッシュ読み込みだけでここまで差が出るのは、長時間動くエージェントの請求内訳が偏っているからです。エージェントは毎ターン、同じものを読み直しています。
- システムプロンプト
- コードベース
- それまでの会話履歴
結果として入力トークンの大半がキャッシュから読まれ、請求もそこへ寄ります。逆に言えば、単発の質問を投げるだけの使い方では、この値下げの恩恵はほとんど届きません。
ベンチマークは大きく伸びた
Anthropicが同一条件で公表した数値では、Fable 5からの伸びが目立ちます。
| ベンチマーク | Fable 5.1 | Fable 5 | Opus 5 | GPT-5.6 Sol |
|---|---|---|---|---|
| Terminal-Bench-Science 0.1 | 52.6% | 24.7% | 29.0% | 22.4% |
| Terminal-Bench 4.0 | 55.8% | 42.0% | 52.3% | 37.3% |
| GDPval-AA v2 | 1853 | 1723 | 1824 | 1711 |
| CursorBench 3.2.0 | 73.4% | 70.5% | 70.0% | 67.2% |
科学系のエージェント作業を測るTerminal-Bench-Scienceが24.7%から52.6%へ、倍以上に伸びました。
表に入れなかった数値も公表されています。
- OSWorld 2.0:partialで77.9%、strictで41.7%
- Humanity’s Last Exam:ツールなしで60.9%、ツールありで65.0%
- AutomationBench:31.4%
いずれもAnthropic自身が公表した評価であって、独立した第三者による検証ではありません。ベンチマークの絶対値より、Fable 5からどの方向へ伸びたかを読むほうが実用的です。先ほどの表でいえば、ターミナル操作と科学研究のように手を動かし続けるタイプのタスクで差が開きました。
公式の推奨は「まずOpus 5」
性能表だけ見ると全部Fable 5.1で回したくなりますが、公式ドキュメントの案内は逆です。
ほとんどのワークロードはClaude Opus 5から始める、と明記されています。Fable 5.1へ移るのは、要求の高い推論と長時間のエージェント作業、あるいはOpus 5を高いeffortで走らせても自分の評価基準に届かなかったときです。
価格差もはっきりしています。
| Opus 5 | Fable 5.1 | |
|---|---|---|
| 入力 | $5 | $10 |
| 出力 | $25 | $50 |
基本単価はちょうど2倍になります。3モデルの位置づけを並べると、選ぶ基準がはっきりします。
- Claude Sonnet 5:速度とコストを優先する場面
- Claude Opus 5:高性能な普段使い
- Claude Fable 5.1:本当に難しい長時間の仕事
「速いモデル」ではない
Fable 5.1を高速モデルだと紹介している記事を見かけますが、公式の比較レイテンシーはこうなっています。
- Claude Fable 5.1:Slower
- Claude Opus 5:Moderate
- Claude Sonnet 5:Fast
- Claude Haiku 4.5:Fastest
同じ一覧表の中でいちばん遅い区分です。
一方でAnthropicの発表には、顧客であるEveryが社内テストでOpus 5の約2倍速く、使用トークンも半分だったと述べた証言も載っています。これは特定タスクでの計測なので、一般化はできません。少ないトークンで仕事を終える結果として早く片付く場合がある、という読み方が実態に近いはずです。同じ長さの応答を速く吐き出すモデルではありません。
長時間タスクの事例として、Rampが機械学習の問題に対して38時間の無人実行を回したという証言も紹介されています。ただしこれはモデル単体の性能ではなく、Claude CodeやManaged Agentsといったエージェント環境と組み合わせた結果です。
自分のプランで使えるか
Fable 5.1はPro、Max、Team、Enterpriseの有料プランすべてで使えます。ただし、料金の扱いはプランごとに違います(Anthropicのヘルプ記事)。
- Maxとプレミアムシート:プラン標準の機能で、週の利用上限の50%まで追加費用なし。その先はpay-as-you-goのクレジット
- Proと標準Teamシート:プランの利用上限に含まれず、最初からusage creditsが必要
- 標準Enterpriseシート:基本の上限に含まれず、組織がusage creditsを有効にした場合のみ利用可能
- 使用量ベースのEnterpriseとAPI:標準のAPI料金で課金
Maxで使う場合も、Fable用の枠が追加で配られるわけではありません。既存の週の上限のうち最大50%までをFableへ割り当てられる、という意味です。上限まで使い切れば、他のモデルを含めて頭打ちになります。
利用枠が思ったより早く減るときは、モデル選択以外の原因も疑ってください。Infostealerにログイン済みセッションを盗まれて利用枠を消費されていた事例も報告されています。
Mythos 5.1は同じモデルで、安全制御だけが違う

公式発表は、Fable 5.1とMythos 5.1は同じモデルで、safeguards(安全制御)の水準だけが違うと明記しています。
Mythos 5.1のモデルIDはclaude-mythos-5-1で、提供先はProject Glasswingの参加者に限られます。米国の組織向けには、防御的なセキュリティ業務を対象としたCyber Verification Programと、ライフサイエンス専門職を対象としたLife Sciences Verification Programという2つの審査枠が用意されています。
つまりMythosは「制限のない版」ではありません。正当な専門研究を通すように設計が違うだけで、審査を通った組織しか触れない点も含めて別物です。
Fable 5.1側のsafeguardsは、誤って止めてしまう頻度が下がりました。
- 初等生物学に関する無害な要求で、生物学向けsafeguardsの発火が85%減少
- サイバーセキュリティ側の誤検知が60%減少
「安全性が85%向上した」ではなく、「無害な要求を止めてしまう誤作動が85%減った」という意味です。ここは読み違えやすいところでした。
該当した要求はフォールバックします。サイバーセキュリティ関連はClaude Opus 4.8へ、生物学関連はClaude Opus 5へ振り分けられ、再ルーティングされた分はFableの価格では課金されません。APIでfallbacksを設定する場合も、許可されている行き先はこの2モデルです。
能力の線引きも整理されました。ソースコードから脆弱性を見つける作業は以前より通りますが、その脆弱性を突くexploitは書きません。
APIから移すなら、直すのは3か所
claude-fable-5からclaude-fable-5-1へ差し替えるだけでは済まない箇所が3つあります。
1. ツール呼び出しの強制をやめる
tool_choiceに{"type": "any"}か{"type": "tool", "name": "..."}を指定すると400エラーになります。思考が常時ONのモデルでツール呼び出しを強制すると推論を飛ばしてしまい、引数の質が落ちるためです。
{"type": "auto"}のままstrict tool useやstructured outputsでスキーマを担保するか、プロンプト側で「この質問にはget_weatherツールを使う」と明示してください。
2. thinkingブロックはモデルに紐づく
thinkingブロックには生成したモデルが記録され、引き継げるのは片方向だけです。Fable 5.1は過去モデルのthinkingブロックを読めますが、Fable 5.1が出したブロックを過去モデルは読めません。読めないブロックはAPI側で落とされ、入力トークンにも計上されません。ルーターやフォールバックで会話の途中にモデルを切り替える構成では、ここで推論が消えます。
3. 過去のターンを編集しない
Fable 5.1のthinkingブロックより前を書き換えると、次のリクエストがエラーになります。該当するのは次のような操作です。
- 過去のターンを編集、並べ替え、削除する
- リクエストごとのリマインダーを過去ターンへ差し込み、次のリクエストで消す
- 同じ会話の途中で
systemやtoolsを組み直す - 画像やドキュメントのURLが、後のリクエストで別のバイト列を返す
2026年8月31日以降に作られたアカウントでは、このチェックが強制されます。次の環境を経由しているなら、前方の整合性はそちらが保ってくれます。
- Claude Code
- claude.ai
- Claude Managed Agents
- Claude Agent SDK
自前でmessages配列を組んでいるコードは、移行前に確認してください。
追加された機能は5つです。
- メッセージ単位でeffortを変更(beta)
- 1ターンだけ適用されるsystemメッセージ(beta)
- ツール呼び出しの合間に進捗テキストを返す
display: "updates"(beta) - キャッシュ読み込みの値下げ
- content provenance(テキスト透かしと、画像・動画へのC2PA署名)
コードを変えなくても出力の癖は変わる
Fable 5からの挙動の違いは、リクエストを1文字も変えなくても表に出ます。
- 独立したツール呼び出しを並列でまとめず、1ターン1呼び出しになることがある
- ツール実行中のユーザー向け進捗テキストが減る。特にeffortが高いときに顕著
- effortが
lowのとき、検索や取得ツールを呼ばず記憶から答えがち - 文が長く段落が少ない、密な文章になる場合がある
- チャットでの太字・見出し・箇条書きの使用が減る
- 文書を要約するとき、原文をそのまま引用符なしで書き写しやすい
- 小さな修正でもファイル全体を書き直しやすい
エージェントループを組んでいるなら、1番目と2番目は体感で気づくはずです。どちらもプロンプト側の指示で戻せる範囲だと公式は説明しています。
effortは上げるほど高くつく
Fable 5.1はAdaptive thinkingが常時ONなので、推論するかどうかではなく、どこまで深く考えさせるかをeffortで決めます。既定値はhighです。
第三者評価機関Artificial Analysisの計測では、effortと費用の関係はこうなっていました。
| effort | Intelligence Index | 1タスクあたりのコスト |
|---|---|---|
| low | 58 | $0.77 |
| medium | 60 | $1.00 |
| high | 62 | $1.43 |
| xhigh | 65 | $2.65 |
| max | 66 | $3.69 |
lowからmaxまででスコアは8ポイント上がる一方、コストは約4.8倍になります。最後の数ポイントを取りにいくと計算量が跳ね上がる構造なので、全部maxで回す運用は現実的ではありません。Fable 5.1ではメッセージ単位でeffortを変えられるようになったので、難しい工程だけ上げて、定型作業は下げる組み方が向いています。
データ保持は30日が前提
Fable 5.1とMythos 5.1は安全監視のため、30日間のデータ保持が必要です。Anthropicが個別に許可した場合を除き、ゼロデータ保持の設定では使えません。
これに対してAnthropicはEnterprise Frontier Safeguards(EFS)を用意しており、データを顧客自身のクラウド環境に置き、人によるレビューも既定では顧客側が行う形になります。提供開始は今秋から段階的とされ、対象となる企業にはEFSが始まるまでの暫定措置も案内されています。
社内規定でゼロデータ保持が必須になっている組織では、ここが導入判断の分かれ目になります。
よくある質問
Fable 5.1は本当に25〜45%安くなったのですか?
入力$10・出力$50というトークン単価はFable 5と同額で、下がっていません。値下げされたのはプロンプトキャッシュの読み込み単価で、$1から$0.25になりました。
その結果として典型的なワークロードで約25%、エージェント的な用途では最大約45%の削減になる、というのがAnthropicの推定です。キャッシュをほとんど使わない単発利用では、削減幅はこれより小さくなります。
Opus 5とFable 5.1はどう使い分けますか?
公式ドキュメントは、ほとんどのワークロードをまずClaude Opus 5から始めるよう案内しています。
Fable 5.1へ移るのは、要求の高い推論や長時間のエージェント作業に当たるとき、あるいはOpus 5を高いeffortで走らせても自分の評価基準に届かなかったときです。基本単価はOpus 5の2倍で、公式の比較レイテンシーもFable 5.1のほうが遅い区分になっています。
Proプランでも使えますか?
使えます。ただしProと標準TeamシートではFable 5.1がプランの利用上限に含まれず、最初からusage creditsでの利用になります。
Maxとプレミアムシートではプラン標準の機能として扱われ、週の利用上限の50%までは追加費用がかかりません。その先はpay-as-you-goのクレジットです。
Mythos 5.1は制限のないFable 5.1ですか?
違います。公式発表は両者を同じモデルとしたうえで、safeguardsの水準が異なると説明しています。
Mythos 5.1にも安全制御はあり、サイバーセキュリティやライフサイエンスの正当な専門研究を通すように設計されているだけです。提供先もProject Glasswingの参加者に限られ、米国組織向けの審査プログラムを通る必要があります。
まとめ:性能表より先に、料金の中身と推奨モデルを見る
Fable 5.1で押さえておくのは3点です。
- 値下げされたのはキャッシュ読み込みだけで、入出力の単価はFable 5と同額
- 公式の推奨は「まずOpus 5」で、Fable 5.1は長時間の難しい仕事に寄せたモデル
- APIから移すなら、ツール呼び出しの強制、thinkingブロックの引き継ぎ、過去ターンの編集の3か所を先に直す
今回の変化で読み取る価値があるのは、52.6%という個別のスコアより、競争の軸が「1問への回答の賢さ」から「長い仕事を最後まで完遂できるか」へ移っている点だと思います。キャッシュ読み込みだけを4分の1にした値付けも、同じ前提を反映しています。何時間も同じ文脈を読み直す使い方が本命だという判断です。
自分の用途がそこに当てはまらないなら、Opus 5のままeffortを調整するほうが費用対効果は上です。まずは手元のタスクをOpus 5で回してみて、届かなかった部分だけFable 5.1へ渡してください。
